高校受験の基礎知識

東京都立 都立入試の状況

今春、平成29年度の都立高入試では、普通科では例年通りの厳しい入試になった一方で、専門学科は倍率が上がり、普通科と専門学科の差がやや縮小しました。年々高まる普通科志向にやや歯止めのかかるかたちになりました。
一般入試全体の合格率は70.4%、不合格者数は13,479人で受検生の約3割が涙を飲みました。
今春の都立高入試が具体的にどのような入試だったのか振り返ってみましょう。

【推薦入試】

文化・スポーツ等特別推薦の入試状況

文化・スポーツ等特別推薦は96校300種目994人の募集数で実施、応募人員は2,128人で応募倍率は2.14倍(前年度2.24倍)になりました。

特別推薦の特徴は次の通りです。

  • 応募倍率は高めで推移しているが、一般推薦よりは低い
  • 人気の高い種目は硬式野球やサッカーなど、運動系のメジャーな種目に偏り、中学校時代にはあまりなじみのない種目への応募者は非常に少ない
  • 特別推薦は一定水準以上の技能を持っていないと定員内不合格になることがある

もっとも応募倍率が高かったのは、葛飾野「サッカー」で7.75倍、次いで城東「硬式野球」7.67倍、東村山西「サッカー」7.33倍、深川(普通)「サッカー」と永山「バスケットボール」6.50倍、飛鳥「英語」6.33倍、府中東「サッカー」と東大和「バスケットボール」が6.00倍、富士森「吹奏楽」5.75倍、文京「硬式野球」5.67倍と続きます。
前年度のベスト10はサッカーと硬式野球の2種目で10校全てを占めましたが、今年度はバスケットボールや英語、吹奏楽といった種目が入りました。ただし応募倍率が3倍以上になった48校78種目についてみると、硬式野球の23校とサッカー21校で全体の5割強となり、他の種目を圧倒しています。そのほか、バスケットボール9校、吹奏楽5校で上位4種目の順位はここ数年変わっていません。しかもこの4種目で3倍以上の高倍率種目の7割強を占めており、特定の種目に人気が偏る応募状況は相変わらずです。
一方で、応募者が一人もいなかった種目は、のべ10校10種目で前年度(11校15種目)よりやや減少しました。
合格者数は862人、合格率は40.5%になりました。応募者がいても定員の数より少ない合格数しか出さなかった定員内不合格の学校は25校29種目でした。

一般推薦の入試状況

 特別推薦含む推薦入試の全日制募集人員9,078人に応募者数は27,274人倍率3.00倍で前年度の3.03倍より0.03ポイントダウンで3年連続倍率が下がっています。

学科別応募倍率 H29 H28
普通科男子 2.90 2.96
普通科女子 3.64 3.71
コース制 2.50 2.50
単位制普通科 3.53 3.62
普通科計 3.26 3.32
商業科 2.53 2.35
工業科(単位制除く) 1.90 1.80
科学技術科 1.72 2.07
農業科 2.71 2.64
家庭科(単位制除く) 3.51 2.59
国際 3.42 3.33
専門学科計 2.39 2.28
総合学科 2.55 2.67
全日制計 3.00 3.03

上の表にあるように男女別普通科の男子は2.90倍(前年度2.96倍)、女子は3.64倍(同3.71倍)、単位制普通科3.53倍(3.62倍)と普通科はコース制を除いて各区分でダウンしました。しかし、専門学科では商業科2.53倍(2.35倍)、工業科1.90倍(1.80倍)、家庭科3.51倍(2.59倍)、農業科2.71倍(2.64倍)、国際科3.42倍(3.33倍)と多くの学科で倍率アップしており、それまでの普通科志向とは逆の応募状況となりました。専門学科全体でも前年度の2.28倍から2.39倍へと上がっているので、全体の倍率ダウンは普通科によるものといえます。

次の表は、校長会予備調査時の都立志望者の内、どれくらいの割合で推薦入試に応募したのかを示した表です。これを見ると倍率が上がった専門学科も含めて多くの学科で下がっていることがわかります。全体で50%を切っており、都立高校を第一志望としていても推薦入試を受けずに、一般入試だけに集中している受験生が増加していることを示しています。

<予備調査時の応募者数に対する推薦応募者の割合>
出願率 H29 H28 H27 H26 H25
普通科男子 42.3 43.8 44.1 46.3 45.4
普通科女子 50.7 51.1 52.9 55.2 54.6
コース制 68.5 76.3 64.0 73.2 74.5
単位制普通科 49.3 49.2 52.7 56.6 60.0
商業科 59.3 57.4 63.3 65.0 66.3
工業科 55.4 56.1 56.8 59.1 61.2
農業科 60.7 62.1 60.8 65.2 62.0
総合学科 61.3 65.9 70.3 71.5 74.8
全体 49.7 50.6 52.2 54.5 55.0

男女別募集の普通科でもっとも高い倍率になったのは、男子が片倉の5.08倍、女子は例年通り青山の8.15倍で以下次の表の通りです。

<推薦入試校倍率ベスト5>
男子 女子
学校名 倍率 学校名 倍率
1位 片倉 5.08 青山 8.15
2位 東大和南 4.91 竹早 6.43
3位 本所 4.83 高島 5.90
4位 葛飾野 4.61 小岩 5.71
5位 東大和 4.50 松原 5.50

単位制普通科は新宿が7.56倍でここ数年ゆるぎない人気を維持しています。次いで大泉桜4.65倍、飛鳥4.35倍と続いています。

全日制の受検者は27,240人、合格者数は9,078人で合格率は33.3%となって前年度の33.0%より若干アップしました。
普通科男子の合格率は34.5%、女子は27.5%で、男子は3人に1人、女子は4人に1人しか合格できない厳しい状況が続いています。
専門学科では多くの学科で倍率がアップした分、合格率が下がり厳しい入試状況になりました。

【一般入試】

第一次募集・分割前期募集の入試状況

◇出願状況

海外帰国学級募集分を除く一般募集人員31,877人に対し、出願締め切り時の応募者数は47,977人、応募倍率は1.50倍(前年度1.51倍)、1.5倍台の高水準安定傾向となっています。
出願締め切り時で応募者が定員に達しなかった全日制の学校(島嶼除く)は、普通科(単位制、コース制含む)5校(前年度5校)、専門学科のべ14校17学科(同19校30学科)、総合学科は1校(同0校)でした。専門学科の定員割れ校が減少しています。
願書差し替え状況を見ると、全日制で願書を取り下げた人は3,054人で応募者の6.4%(前年度7.5%)、前年度は普通科女子から商業科への移動が多く、取り下げ率が上がりましたが、今年度はその動きもなく前々年度(6.4%)の水準にもどりました。差し替え後の定員割れは普通科1校、専門学科5校5学科(前年度10校16学科)に減少しました。
全日制の最終的な応募者数は、47,975人、最終応募倍率は願書締め切り時と同じ1.50倍でした。

学科別最終応募倍率 H29 H28
普通科男子 1.57 1.56
普通科女子 1.58 1.62
コース制 1.62 1.49
単位制普通科 1.53 1.54
普通科計 1.55 1.57
商業科 1.16 1.21
工業科(単位制除く) 1.23 1.17
農業科 1.38 1.31
家庭科(単位制除く) 1.48 1.16
専門学科計 1.31 1.28
総合学科 1.40 1.38

上の表は学科別の応募状況をまとめたものです。
普通科全体の倍率は前年度より0.02ポイントダウンしましたが、専門学科は工業科、農業科、家庭科など多くの学科で倍率アップ。専門科全体で1.31倍(前年度1.28倍)となり高まる普通科志向にやや歯止めがかかりました。
普通科女子の最終応募者数は前年度より約300人減、一方で女子の応募者が増加したのは普通科単位制(約30人増)、家庭科(約40人増)、総合学科(約90人増)、昼間定時制(約110人増)などで、これらに移動したことがわかります。しかし商業科の女子はむしろ応募者が減っている(16人減)ことは注目されます。

<一般入試最終応募倍率ベスト5>
男子 女子
学校名 倍率 学校名 倍率
1位 秋留台 2.58 広尾 2.46
2位 日比谷 2.47 南葛飾 2.30
3位 富士 2.29 竹早 2.29
4位 豊多摩 2.26 向丘 2.23
5位 北園 2.13 豊多摩 2.22

男女別募集の普通科でもっとも高い倍率になったのは、男子は秋留台で2.58倍。ながらくトップの座に君臨していた日比谷が2.47倍で2位に落ちました。女子は今年も広尾で2.46倍でした。男子は次いで、富士2.29倍、豊多摩2.26倍、北園2.13倍の順、女子は南葛飾2.30倍、竹早2.29倍、向丘2.23倍、豊多摩2.22倍の順でした。
単位制普通科では新宿が2.40倍で前年度に引き続きトップ、2位は同じく国分寺で1.79倍、芦花は1.76倍でベスト3は前年度と同じです。
コース制は深川「外国語」2.18倍、小平「外国語」が1.84 倍、松が谷「外国語」1.79 倍でベスト3は1位と2位が入れ替わりましたが、この3校がコース制高校の人気校といえます。
総合学科のトップは王子総合1.62倍、前年度入試改革によって倍率ダウンした晴海総合が1.61倍で2位に食い込みました。3位は杉並総合で1.57倍、1位の王子総合と3位の杉並総合は毎年高い倍率になります。

◇受験・合格者の状況

2月24日(金)の学力検査に臨んだ全日制の受検者数は45,509人、受検倍率は1.43倍、前年度と同じ高い倍率を維持しました。
応募はしたものの受検を棄権した生徒は2,466人で応募者の5.1%(前年度5.3%)となり、過去最低の棄権率を更新しました。
全日制45,509人の受検者の内、合格者数は32,030人、実質競争率は1.42倍でH24年度と前年度のH28年度に記録した過去最高倍率に並ぶ高い競争率になりました。合格率は70.4%、不合格者数は13,479人で前年度(13,387人)より92人増加しました。これは過去最高の不合格者数です。
男女別募集の男子の実質倍率は1.46倍で前年度より0.01ポイントアップして最高倍率を更新、女子は1.47倍で前年度より0.02ポイントダウンしたものの過去2番目に高い競争率となりました。合格率は男子68.3%(前年度68.8%)、女子68.1%(同67.1%)、コース制67.6%(同72.6%)、単位制普通科69.9%(同69.1%)で普通科全体の合格率は68.4%(同68.2%)でいずれも7割を切っています。
専門学科全体の合格率は79.5%で前年度(81.6%)より下がり、普通科と専門学科の差が若干縮まりました。商業科の合格率は87.0%(前年度85.0%)、工業科83.9%(同87.6%)、農業科76.1%(同80.2%)、家庭科68.7%(86.7%)、産業科68.9%(75.4%)などで普通科と同じ低い合格率になった学科もありました。総合学科は74.9%(75.7%)でした。

学科別合格率 H29 H28
普通科男子 68.3% 68.8%
普通科女子 68.1% 67.1%
コース制 67.6% 72.6%
単位制普通科 69.9% 69.1%
普通科計 68.4% 68.2%
商業科 87.0% 85.0%
工業科(単位制除く) 83.9% 87.6%
農業科 76.1% 80.2%
家庭科(単位制除く) 68.7% 86.7%
専門学科計 79.5% 81.6%
総合学科 74.9% 75.7%
◇まとめ

① 一般入試は過去最多の不合格者数がでる激戦だった。
② 普通科は女子の倍率がダウンしたものの高い倍率を維持した。
③ 普通科男子では前年度に引き続き学力上位層の志望者が減少し、中堅層が増加した。
④ 専門学科も多くの学科で倍率アップし、都立校全体で厳しい入試になった。

第二次募集・分割後期募集の入試状況

出願状況

全日制の第二次募集・分割後期募集の募集人員は1,138人です。応募者数は1,436人、応募倍率は1.26倍で前年度(1.17倍)より上がりましたが、依然として低倍率となっています。
第一次募集・分割前期募集は過去最多の不合格者がでたのに、第二次募集・分割後期募集が低倍率なのはなぜでしょう?

◆理由① 第一次募集・分割前期募集の不合格者の多くが私立併願校に手続きをしたから

都立第一志望の受験生の多くは、私立高校を第二志望として受験しています。その際、私立高の「併願優遇」制度を利用して受験する生徒が多数を占めます。
この「併願優遇」の手続き期間は、多くの私立高校で「都立高校第一次募集・分割前期募集の合格発表後」としているため、二次募集・分割後期募集に応募する生徒が少なくなり倍率が低くなるのです。

◆理由② 第二次募集の実施校が少ないから

定員1,138人とありますが、この内訳は次のようになります。
まず、大島や新島など島しょの学校の定員が324人含まれています。これを除くと814人です。またこのうち、分割募集実施校があらかじめ設定した分割後期の募集数が761人なので、第一次募集で入学手続き数が定員より少ないために行う第二次募集の募集数は53人ということになります。
分割募集実施校以外の第二次募集を行った学校は、普通科で両国、足立西、翔陽の3校、専門学科は芝商業、第一商業、北豊島工業、足立工業、田無工業の5校だけでした。このように限られた学校だけが募集を行っていることも応募者が少ない要因になっています

受検・合格者の状況

願書差し替え後の最終応募者数は1,433人で倍率は1.27倍でした。出願締め切り時の応募者数より若干増えたのは、定時制単位制などから全日制高校への差し替えがあったためです。
受検者数は1,404人で受検倍率は1.23倍(前年度1.16倍)、合格者数は886人で、実質倍率は1.58倍、合格率は63.1%、前年度(68.4%)より下がり第一次募集・分割前期募集を上回る厳しい入試状況となっています。
大島や新島などの分を除くと、受検状況は下の表のようになります。

学科 定員 最終応募 倍率 受検 倍率 合格 実質倍率
普通科 711 1,278 1.80 1,244 1.75 767 1.62
専門学科 103 155 1.50 150 1.46 109 1.38
全日制計 814 1,433 1.76 1,394 1.71 876 1.59