高校受験の基礎知識

神奈川県 公立高校入試のしくみ

神奈川県公立高校では全日制,定時制,通信制過程で一斉に入試を行います。これを「共通選抜」といっています。全日制はこの1回だけの入試になりますが(欠員が出たら二次募集を実施する),定時制と通信制では共通選抜の後,「定通分割募集」を実施します。

共通選抜

■募集

共通選抜では,第1次選抜と第2次選抜にわかれます。第1次選抜で募集人員の90%を決め,第2次選抜で残りを決める2段階選抜です。

■出願

志願できる高校は1校1課程の1学科・コース・部のみです。
出願後,1回に限り志願変更ができます。定時制から全日制へ,全日制から定時制へ志願変更することもできますが,受検料の差額を変更先の高校で納付しなくてはなりません。
また,県立から市立,市立から県立に志願変更をする際は,受検料を納付しなおす必要があります。

■検査

共通選抜では,国数英社理の5教科と面接を実施します。必要に応じて特色検査を行う学校もあります。
なお,2017年度より学力検査ではマークシート方式が導入されました。

■選考

第1次選考では「S1」の高いものから合格者を決めていき,第2次選考では調査書の評定を除いたS2で選考します。

第1次選考

第1次選考で,募集人員の90%が対象です。選考は,S1値の高い者から順に決めていきます。

S1値

S1値は,共通選抜の第1次選考で使用される数値です。S1値は次のように求めます。

▼調査書の評定
(A) = ( 2年9科 ) + ( 3年9科 ) × 2 ( 135点満点 )
▼学力検査の結果
(B) = (3から5科)×100(300~500点満点)
▼特色検査の結果
(D) = 特色検査点

(A)(B)(D)をそれぞれ100点満点に換算し(これをa,b,dとする),各高校が決めた数値(f,g,i)を掛けて合計数値S1を求めます。
S1=(a×f)+(b×g)
特色検査を実施した場合は,
S1=(a×f)+(b×g)+(d×i)
f,gは「2」以上の整数とし,合計して10になるようにします。iは1~5の整数とします。
したがってS1は1,000点満点になります。
また,特色検査を行った場合は特色検査点を加算するため,満点は1,000点以上となります。

調査書の評定に関しては,3科以内の教科について2倍まで重点化することができます。
また,学科検査についても2科以内の教科について,2倍まで重点化することができます。

第2次選考

共通選抜では合格者を2段階で決めていきます。
第二段階が第2次選考で、募集人員まで合格者を決めていきます。
選考は、実施した検査の結果と調査書の各教科の第3学年の「主体的に学習に取り組む態度」の評価で行います。

S2値

S2値は,共通選抜の第2次選考で使用される数値です。
選考は,値の高い者から順に決めていきます。S2値は次のように求めます。

▼学力検査の結果
(B) = (3から5科)×100(300~500点満点)
▼調査書の各教科の第3学年の「主体的に学習に取り組む態度」の評価の結果
(C) = 評価A~Cの合計値
▼特色検査の結果
(D) = 特色検査点

(B)(C)(D)をそれぞれ100点満点に換算し(これをb,c,dとする),各高校が決めた数値(g,h,i)を掛けて合計数値S2を求めます。
S2=(b×g)+(c×h)
特色検査を実施した場合は,
S2=(b×g)+(c×h)+(d×i)
g,hは「2」以上の整数とし,合計して10になるようにします。iは1~5の整数とします。
したがってS2は1,000点満点になります。
また,特色検査を行った場合は特色検査点を加算するため,満点は1,000点以上となります。

学力検査に関しては2科以内の教科について,2倍まで重点化することができます。

特色検査

特色検査は学力検査や面接でわからない受検生の能力や特性をみるために行われ,「実技検査」と「自己表現検査」の2種類あります。

① 実技検査
■実技検査の内容
  • 美術系の学科・・デッサン
  • 英語系の学科・・英語による問答
  • 体育系の学科・・スポーツ種目
  • 音楽系の学科・・独唱や演奏 など
■評価の観点

各学校においては,実技検査の目的に基づき理解力,表現力,創造性,正確性,技能力などを参考にして評価を行います。

■実施方法

以下の方法で実技検査を実施します。

  • 検査会場には教員を2人以上配置します。
  • 受検者1人あたりの配当時間は50分です。
② 自己表現検査
■自己表現検査の内容
  • テーマに基づくスピーチ
  • テーマに基づくグループ討論
  • テーマに基づく作文
  • 提示された資料を活用した記述 など
■評価の観点

各学校においては,実技検査の目的に基づき表現力,創造性,理解度,他者とのかかわり,情報活用能力,論理的思考力などを参考にして評価を行います。

■実施方法

以下の方法で実技検査を実施します。

  • 検査会場には教員を2人以上配置します。
  • 個人やグループによる口述表現または記述表現,また検査時間など,形式は各学校で定めます。
③ 面接

面接では次の2つの観点から質問されることになっています。

  • 『共通の観点』として中学校での学習に対する意欲や部活動などに対する意欲,そしてその高校を志望した理由。
  • 『学校ごとの観点』として,高校に入ってからの学習意欲や部活動などの意欲,また将来の希望など。

具体的にどんな質問がされるのでしょうか。

①『共通の観点』では次のような質問が予想されます。
  • なぜ本校に入学したいのですか
  • 面接シートに中学校での学習活動について○○と書かれていますが,どのように意欲的に取り組んだのですか。
  • 調査書によると,○○部で活動したとありますが,どのような意欲を持って取り組んだのですか。
②『学校ごとの観点』では次のような質問が予想されます。
  • 高校に入学して,学習面ではどのように取り組みたいと思いますか。
  • 高校に入学して,どの部活動に入って,どのような目標を持って取り組みたいですか。
  • 本校の特色にはどのようなことがありますか。
  • 高校卒業後の進路についてどう考えていますか。
<面接の形態など>
  • 面接の形態:受検生1人と試験官2人以上の個人面接です。
  • 面接時間:受検生1人あたり10分程度です。
  • 面接シート:受検生があらかじめ提出した『面接シート』と調査書の記載内容をもとに行われます。
<面接シート>

『面接シート』は受検生が自分で記入し,出願のときに入学願書と一緒に高校に提出します。
このシートは面接の際の参考資料なので,それ自体を点数化したりすることはありません。

面接シートは以下の項目で構成されています。

  • なぜこの学校に入学したいのですか。
  • 中学校での教科等の学習活動等に対して,どのような意欲をもって取り組みましたか。
  • 中学校のときに教科等以外の活動に対して,どのような意欲をもって取り組みましたか。 
    (学校外の取り組みでも構いません)
  • 自分自身のよいところはどのようなところだと考えていますか。

なお,志願先を変更するときには,改めて面接シートを作成し,志願変更先の高校に提出することになります。

では,面接対策としてどんな準備が必要でしょうか。

  • 志望の動機は必ず聞かれます。その高校に入って何をやりたいのか(勉強でも部活動でも文化祭や体育祭などの学校行事でも)を考えて自分のことばで話す練習をしましょう。
  • 中学校でやってきたことも必ず聞かれます。今までの取り組みを振り返ってみましょう。
  • 志望校の特色をつかんでおきましょう。その高校がどんな目標を持って教育活動を行っているのか調べましょう。
  • なるべく早く高校訪問をして,学校の雰囲気に触れることが大切です。
  • 提出する面接シートはコピーしてとっておきましょう。何を書いたかわかるようにしておくことです。
<面接シートの書き方>

神奈川県教育委員会で紹介されていますのでご参考ください。
>>面接シートの見本

■特色検査の概要

学校ごとの詳しい評価の観点は神奈川県教育委員会で紹介されていますのでご参考ください。
2023年度 神奈川県特色検査概要
>>特色検査の概要

重点化

特定の教科を重視するために入試得点や評定を1.5倍したり2倍したりすることを重点化といいます。例えば国際関係に関する学科では,英語の評定や英語の入試得点を2倍し,英語の得意な生徒の成績を高くなるようにして選考します。体育に関する学科では体育の評定を重点化して体育の得意な生徒の成績を高くなるようにしています。
重点化を行う場合のS1は次のように求めます。

<例.調査書:国英×2,学力検査:英数×1.5,比率が4:6の場合>
  保体 技家
2年内申 5 4 5 5 4 4 4 4 5 40
3年内申 5 4 5 5 5 4 4 4 5 41
 
学力検査 86 78 79 70 70 383
S1の計算方法
▼調査書の評定
(国15×2 + 数12 + 英15×2 + 社15 + 理14 +音12 + 美12 + 保体12 + 技家15)=152(A)
▼学力検査の結果
国86 + 数78×1.5 + 英79×1.5 + 社70 + 理70 = 462(B)

重点化した場合の調査書点の満点は165点。
(a)=152÷165×100=92
同様に重点化した場合の学力検査の満点は600点。
(b)=462÷600×100=77

各値にS1の比率(4:6)を掛けます。
S1=92×4 + 77×6 =830

したがって,S1は830点となります。

定通分割選抜

■募集

定時制と通信制高校は入試の機会が2回あります。共通選抜とこの定通分割選抜です。定員の80%を共通選抜で,残りの20%を定通分割選抜で選抜します。
共通選抜で,募集人員に満たない場合は,その分定通分割選抜に上乗せされます。
ただし,以下の高校は共通選抜で募集人員のすべてを選抜するため,定通分割選抜は設定していません。

県立横浜明朋,県立川崎(定),県立厚木清南(定),県立相模向陽館,横浜市立横浜総合,川崎市立川崎(定)

■出願

すでに他の国公私立高校に合格している生徒は出願できません。
出願後,1回に限り志願変更ができます。定時制から通信制へ,通信制から定時制への変更も可能です。

■検査

定時制では国数英の3教科と面接,通信制では面接または作文を実施します。
特色検査を実施することもあります。

■選考

定時制では,募集人員のすべてをS値によって選考します。
通信制では,調査書と実施した検査の結果で選考します。

特別募集

海外帰国生徒,在県外国人等,インクルーシブ教育実践推進校で特別募集を行っています。
2023年度の特別募集の対象校は以下の通りです。

海外帰国生徒 神奈川総合「国際文化」,新城,鶴嶺,横浜国際「国際・バカロレア」,
相模原弥栄「普通」,市立東,西湘,伊志田
在県外国人 鶴見総合,横浜清陵,県立川崎,横浜旭陵,新栄,大師,相模原弥栄「普通」,高浜,藤沢総合,大和南,伊勢原,横浜市立みなと総合,橋本,座間総合,愛川,横浜明朋,相模向陽館,市立横浜商業「国際」,横浜総合,市立川崎(定時制)
インクルーシブ教育実践推進校 川崎北,城郷,霧が丘,上矢部,津久井浜,湘南台,茅ヶ崎,
二宮,伊勢原,足柄,厚木西,綾瀬,上鶴間,橋本

二次募集

全日制,定時制,通信制ともに,募集人員に欠員がでた場合に二次募集を行います。従って,どの学校も行うということではありません。
二次募集を実施するかどうかは,それぞれの選抜の合格発表日に神奈川県の教育委員会から発表があります。

■共通選抜の二次募集

共通選抜の二次募集では国数英の3教科で学力検査を実施。調査書と実施した検査の結果をもとにして選考します。

■定通分割募集の二次募集は実施しません

時間割と持ち物

5科入試の時間割は次の通りです。

開始~終了時刻 時間 教科
8:50 ~ 9:10 20分 検査についての注意
9:20 ~ 10:10 50分 外国語(英語)
10:30 ~ 11:20 50分 国語
11:40 ~ 12:30 50分 数学
昼食
13:20 ~ 14:10 50分 理科
14:30 ~ 15:20 50分 社会

※外国語(英語)はリスニングテストを含みます。

試験科目が国数英の3科入試校の場合は,学力検査の終了時間が上記と異なる場合があります。
面接や実技検査などを行う場合は,各学校が受検者に集合時間,時間割を知らせることになっています。
また、持ち物は次のようになっています。

<持ち物>
  • ◇受検票
  • ◇筆記用具(HBまたはBの黒鉛筆が適しています。シャープペンシルを使用する場合は0.5mm以上のものにしましょう。ボールペンは不可です)
  • ◇昼食
  • ◇うわばき(必要としない学校もあります)
  • ◇健康観察票