吉野創育

2026年度 都立入試を振り返って

~入試問題分析編~

今年度の都立高校一般入試について、出題傾向や難易度、各教科で求められた力を整理した分析ページです。 次年度に高校受験を控える受験生と保護者の方に向けて、実際の入試がどのような内容だったのかを分かりやすくまとめています。

全体講評

2月21日(土)、都立高校の一般入試が行われました。今回は、今年の入試問題の出題内容を振り返り、次年度に高校受験を控えている次の受験生、そして保護者の方々に、まずは実際の入試がどのようなものであったかを知って頂こうと思います。

全体的には、どの教科も出題傾向には変化がなく、難易度も例年通りであったと思われます。もしかすると若干、難易度が低かったかもしれません。詳細な平均正答率は例年6月下旬頃に東京都教育委員会より発表されるので、その際には吉野創育より分析結果を掲載させて頂きます。

難易度については注意が必要です。それは単純に「難易度が低い=都立入試は易しい」にはならない、ということです。難易度が下がると、当然、平均点は高くなります。ということは、多くの受験生が高得点を取るので、自分自身も確実に高得点を取らなければライバルに差を空けられてしまうことになります。もし大多数の受験生が正解する基本問題を「うっかり」落としてしまったら、ライバル達ととても大きな差が開いてしまいます。つまり、「難易度が低い=基本問題の理解が益々重要」になり、高い水準での競争になります。1つのミスが致命傷になる恐れがあるということを肝に銘じておきましょう。

国語

大問1の漢字の読み、大問2の漢字の書き取りの問題数と配点は例年通りでした。大問1の(3)「遵守」<じゅんしゅ>、(4)憧れる<あごが・れる>、(5)「謹んで」<つつし・んで>は、もしかすると正答率が低いかもしれません。
漢字の学習は、なぜ必要か?「高校入試」という改まった試験では、小説文、論説文ともに、中学生が日常生活で使うことのない言葉や表現が出てきます。その言葉を知っているか知っていないかで、問題文を正確に理解できるかどうかが分かれてきます。高校生になればそのような言葉を使って思考をしてほしいという、都立高校からのメッセージでもあります。漢字の練習は入試直前に慌てて取り組んでも身につきません。早い段階から何度も漢字ワークの類で練習をくり返して地道に身につけてゆくようにしましょう。

大問3での小説文の出題も例年通りです。字数は3400字前後で、これも例年通りでした。都立入試では登場人物の年齢が受験生(中学生)に近い文章から出題されることが多く、一昨年は高校生、昨年は小学生が主人公の文章でした。今年は主人公の年齢は二十歳ですが、回想場面が中心なので、実質的には昨年と同様で小学生が主人公であると言えます。設問も例年通りでした。心情や表現の問題は気分で解くのではなく、「前提」「場面」「行動・行為」「心情の変化」の関係を正確につかみながら読む練習を重ねましょう。
また、出題される傾向のあるジャンルの小説を読んで慣れておくこともプラスになります。今回の文章は『長すぎた幕間』(小川洋子)からの出題でした。

大問4の説明的文章は、「対話」の目指すものについて哲学的に論じた文章からの出題でした。字数は約4000字で少し長めの問題文でした。「対話」はもちろん、論理の組み立ての前提となる「言葉」というもののとらえかたからして、日常生活の中ではなかなか考える機会がないものであるため、内容の理解に苦労したのではないかと思われます。出題の傍線部の直前直後をよく読んだり、筆者の主張の<抽象>の部分と、筆者が例を挙げて説明する<具体>の部分に分けて、気をつけながら読む練習を積み重ねたりすることで、正解にたどり着けるようにしましょう。今回の文章は『対話の技法』(納富信留)からの出題でした。

大問5は、古典の分野について、「複数資料の活用」、「対話での発言の役割」「文法知識」などを問う出題形式でした。
今年は助詞「と」の用法の識別を問う問題が出題されました。また昨年・一昨年は出題されていなかった「歴史的仮名遣い」の出題が目を引きました。雅楽というなじみのない題材を扱った文章なので、いきなり拒否感を持ってしまうとそれだけで難しいという印象を持ったかもしれません。

全体的には昨年よりはやや難と思われますが、しっかりと準備をしていた受験生なら解くことができたと思われます。ただし“感覚で解く”クセがついているとなかなか正解にたどりつけません。模擬試験や実力テストなどを通して、早い時期から文章のつながりや関係をきちんと把握し、考えながら解く練習を何度も重ね、実際の入試の時には、そのような読み方を自然に行えるようにしておきましょう。

数学

大問1は例年通り、9問からなる小問集合で、難易度としては標準的でした。毎年、問7・問8のうち1問はデータの活用の2年生範囲(確率、箱ひげ図、四分位範囲)と1年生範囲(度数分布表などの問題)が交互に出題されていますが、今年は1年生範囲の問題が出題されました。もう1問は、今年もそうですが、平面図形の問題が出題される際は、角の大きさを求める問題の出題が多く、特に円を絡ませた問題の出題が多くなってきています。

大問2は式の利用の問題で、題材は自然数・数の性質に関する問題でした。問1は2けたの自然数と、その数の十の位と一の位を入れ替えた自然数についての出題、問2は3けたの自然数とその数の百の位と一の位を入れ替えた自然数についての出題で、数の性質について証明する記述式問題でした。基本事項をきちんと理解していれば対応できる問題でした。

大問3は関数についての問題で、問1・問2の難易度は標準的、問3はやや難だったかもしれません。内容はy=ax²についての出題でした。近年は関数y=ax²についての出題と、1次関数についての問題が交互に出題されている傾向です。

大問4は平面図形の出題でした。問1は角の大きさをαを用いて表す問題、問2①は三角形の相似を証明する問題で、それぞれ難易度としては標準的でした。問2②は相似な図形の性質を用いて線分の長さを求める問題で、難易度はやや難かもしれませんが、これまでの傾向と大きな変更のない出題でした。例年、ここでは面積に関わる問題(図形の面積の割合を求める問題など)や、線分の長さを求める問題が出題されています。

大問5は空間図形についての出題でした。難易度としては問1は標準的、問2はやや難であったと思われます。空間内での線分や平面の位置関係(垂直関係)を意識する問題が出題される傾向にあります。今年度も空間内での位置関係がイメージできるかどうかが、解法のポイントとなる問題でした。

英語

大問1は例年通りリスニング問題で、〔問題A〕は3題、〔問題B〕は2題の構成でした。〔問題B〕のQuestion2は質問に対して内容を踏まえて英語で答える問題で、聞き取る力、内容を理解する力、英作文の力を要する問題でした。

大問2は会話文を読みながら資料(図表)を読み取る問題が2題、Eメールの内容を理解して答える問題が1題、計3題が出題されました。日常生活の中で英語を活用できる能力を見る内容です。会話文を理解するだけでなく、資料に英語で記載されている内容を理解して解答を考えなければなりません。中学生が日常生活の中で英文で書かれた図表やパンフレットを目にする機会はそうそう無いと思われるので、問題集やもぎ試験などを利用して豊富に練習して慣れておく必要があるでしょう。

大問3は会話文による出題です。高校2年生の登場人物が美化委員会として、次の委員会に向けてどのように取り組むかを話し合っている内容でした。対話数が50回前後あり、択一式の正誤問題では選択肢が全て英語で書かれています。全てを和訳していると試験時間が足りなくなるので、このような形式の出題に慣れるよう、早期から「英語で読んで英語で判断」できるよう練習を重ねておく必要があります。

大問4は長文読解問題で、中学2年生のダンスチームがtown festivalでダンスを披露したことをきっかけとして、聴衆にいかに満足してもらうかということに真正面から向き合う内容の文章でした。単語数は948語でした。ただし各小問は択一式ですが、全ての選択肢が英語で書かれているため、これら選択肢の単語数(計420語)を合計すると、全部で1300語前後になります。これも一文ごとに和訳していると試験時間が足りなくなります。英文を読んでそのまま大意を理解できるよう、早期から練習を重ねておく必要があります。

全体的に、出題形式は例年通りで大きな変化は見られませんでした。次年度も大きな変化はないと思われます。都立入試をゴールに見据え、1年次・2年次で学習した内容で理解できていないところをしっかりと復習し、さらに学習内容を身につけるために少しずつ練習を重ねるよう、学習計画を立てることから始めましょう。

社会

大問1は地理歴史の分野別問題、大問2は世界の地理に関する問題、大問3は日本の地理に関する問題、大問4は歴史分野の問題、大問5は公民分野の問題で、大問6は地歴公民の融合問題でした。

出題傾向に大きな変化はなく、例年通り資料の読み取り・活用問題が中心でした。昨年度と同様に、解答するのに知識、資料の読み取り・活用の技能、思考力・判断力のすべてを要求される問題が多いように思われます。文章量・資料の情報量が多く、時間制限がある中で、問題文や資料のどの部分が解答に必要であるか、どの部分が解答の手がかりとなるかを判断・選択し、処理する「読み解く力」と、それをもとにした「思考力・判断力」が求められる傾向が強まっています。

文章記述問題は、複数の資料をもとに解答する点でこれまでと変わりはなく、昨年度と同様に、今年度も読み取るべき内容がほぼすべて文章で示した資料に書かれており、地図・表・グラフなどの資料から読み取る内容も、簡単な数値の増減などの基礎的な内容でした。そのため難易度は昨年度とあまり変わらないと考えられます。地理の文章記述問題では高崎市の中心市街地の土地利用の変化を答える問題、歴史の文章記述問題では富岡製糸場を建設した目的と機械製糸場数、機械製糸場が立地する府県数の変化を答える問題、公民の文章記述問題では交通バリアフリー法の施行後のノンステップバスの車両数の変化を答える問題が出題されました。出題形式に慣れているかどうかが重要で、出題形式に慣れていれば、問題文の指示に従って資料から必要な内容を読み取り、解答を正しく記述することができたと思われます。

全体的に文章量や資料の情報量が特に多く、都立高校入試の問題形式に慣れていないと、基本的な知識や資料を読み取る能力を身に付けていたとしても時間不足のために十分に得点できないという傾向が非常に強く見られます。過去問をしっかりと解いて出題形式に慣れ、実力テストや模擬試験など緊張感と時間制限がある中で問題を解く経験を十分に積んでいないと、身に付けた力を十分に発揮することが難しかったのではないかと思われます。
基本的な学習に取り組むことに加えて、問題演習を重ねることが非常に重要です。

理科

大問1は前年度と同様、6つの小問からなる小問集合の問題で、6小問すべて4択の記号選択問題でした。6つの小問題すべて4択の記号選択問題で、小問題の内容はそれぞれ独立しており、物理・化学・生物・地学がまんべんなく出題されていました。

大問2は生徒が興味を持った内容についてのレポートなどを読んで解く問題で、4問の小問からなり、うち3問が4択の記号選択問題、1問が文中の語句を選ぶ記号の完答問題でした。出題分野は物理・化学・生物・地学から1題ずつ出題されていました。

大問3は気象の変化についての問題で、<観測>と<結果>をもとに4つの小問に答える形式で、うち3問が4択の記号選択問題、1問が文中の語句を選ぶ記号の完答問題でした。

大問4はヒトの体内の消化に関する問題で、<実験>と<結果>をもとに、3つの小問に答える形式で、うち2問が4択の記号選択問題、1問が文中の語句を選ぶ記号の完答問題でした。

大問5はイオンの性質を調べる実験について、<実験>と<結果>をもとに、4つの小問に答える形式で、うち1問が4択の記号選択問題、2問が記号の完答問題、1問が文章記述問題でした。

大問6は物体に働く力に関する実験について、<実験>と<結果>をもとに、4つの小問に答える形式で、大問5と同じ出題形式(記号選択1題、記述完答2題、文章記述1題)でした。

都立入試は大問3からは4つの大問でそれぞれ出題分野が独立しており、ここ4年は複数分野の知識を応用する出題は見られません。概ね例年と大きな変化はありませんでしたが、レポートや実験、観察、結果を踏まえて解く問題が多く、それらをしっかりと読み取る力が必要になります。しっかりと読めば解ける問題ばかりですが、文章量が多いため、限られた時間で内容を把握する練習を重ねておくことが必要になります。設問条件の確認と、資料をもとに冷静に判断する姿勢が引き続き重要です。

なお、大問6の問3は出題設定に誤りがあったため、受検者全員に一律加点が行われました。

まとめ

今回の都立入試は、全体として大きな形式変更はなく、例年の傾向を踏襲した出題でした。一方で、どの教科でも「基本知識を使って資料や文章を正確に読み解く力」が強く求められています。

次の入試まで「あと1年」ですが、時間はあっという間に過ぎて行きます(もう1ヶ月過ぎました!)。よく受験で「試験時間が足りず、実力が出せなかった…」という後悔の言葉を耳にしますが、時間は“受験生全員に平等に”与えられています。その中で計画を立て、練習を重ね、与えられた時間をどれだけ有効に活用して準備できるかという力量も入試では問われています。都立をはじめ、各道府県の公立高校の入試問題が公表されていますが、そういう意味では、既に2027年度入試はもう始まっていると言えるでしょう。

吉野創育では、今後も引き続き、受験生の皆さんのお役に立つ高校入試情報を順次発信していく予定です。